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市民手作り映画村 旭川で28年 終幕へ
2019年6月20日(月) 朝日新聞
28年間にわたって旭川市で名画を紹介してきた市民団体「旭川映画村」が、23日、最後の上映会を開催する。メンバーの高齢化などで運営が限界を迎えた。最後の作品はスペイン・アルゼンチン映画の「家(うち)へ帰ろう」だ。
映画村が結成されたのは1991年。その前年、市内のショッピングセンターで映画評論家、白井佳夫さんによる映画サロンが1年間開かれた。上映後に映画談義に花を咲かせ、顔見知りとなった参加者たちが、「せっかくともった文化の火を消してはならない。映画をみんなで見て、感動を共有しよう」と、映画村を発足させた。活動は「12人の怒れる男」の上映を皮切りにスタートした。
「第三の男」や「羅生門」など、よく知られた名画からパレスチナやイラン、タイなどの佳品まで、これまでに上映したのは28年間で140本超。旭川では上映されてないが、運営メンバーが実際に見て「面白い」と思った作品の上映に力を入れた。
来場者が予想以上に訪れ、ぼたん雪が降る中、「札止め」をしたこともあった。結末が一般公開当時と変わっているのに驚き、後で結末が2パターン作られていたことを知ったこともあった。上映後の感想を会場では書かず、後日、郵送してくる熱心なファンもいた。
しかし、最近は運営メンバーの高齢化や減少が進み、活動に幕を下ろすことにしたという。長年、携わってきた大谷淳子さん(62)は「長い間、見て、支えてくれた方々に、本当にありがとうと言いたい。最後の作品は、最後の最後に幸せな気持ちが訪れる素晴らしい作品。ぜひ、見てください」と呼びかける。
最後に上映する「家へ帰ろう」は、アルゼンチンに住む88歳の仕立屋が、70年前にホロコーストから命を救ってくれた親友へスーツを届けに、ポーランドへと旅する物語。23日はシアターカンダで午前11時。午後1時半、同4時の3回上映。一般1500円(前売り1200円)、高校生以下1千円。問い合わせ旭川映画村(0166・23・3623)へ。
(本田大次郎)