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<安保法制 私は言いたい> 映画監督 塚本晋也さん
2015年7月23日(木) 北海道新聞 朝刊
<安保法制 私は言いたい>
映画監督 塚本晋也さん
戦場の恐怖 思い描いて
_戦争が近づいている。安全保障関連法案の国会審議を見てそう感じた。戦争の恐ろしさを多くの人に伝えたいと思い、大岡昇平の小説「野火」を映画化した。
_高校時代に「野火」を読んで、戦場の生々しい描写が頭から離れなかった。トラウマ(心の傷)になった。でも、そのおかげで戦争は怖い、嫌だ、という感覚が身体にしみついた。
_出品したベネチア国際映画祭では、暴力的な場面が多すぎるとの批判も受けた。銃撃で飛び散った脳みそや内蔵、地面に転がった腕。飢えた兵士が人肉を食べる場面もある。戦争のむごさと狂気を徹底的に描いた。それでも実際の戦場はもっと悲惨なのではないか。
_映像を直視できず、目をそらしてしまう人もいるだろう。でも、目をそらす時の嫌悪感を大事にしてほしい。戦争の記憶が社会から薄れ、きれいな死を描いた映画が増えたが、戦争は決して美化すべきではない。
_本物の戦争は悪いトラウマだけを残す。若い世代には、映画でも読書でもいいので良いトラウマを体験してほしい。怖いものは怖い、嫌なものは嫌だと言える社会を守りたい。私は安保法案に反対だ。
(聞き手・報道センター 関口裕士)