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テレビには何が可能か 映画監督 是枝裕和さん 元HBC社長 長沼修さん
2017年9月25日 北海道新聞夕刊
テレビには何が可能か
視聴率が制作の足かせ
札幌国際芸術祭(SIAF(サイアフ))のプロジェクト「狸小路TV」のイベントが17日、札幌市中央区の札幌プラザ2・5で開かれ、元HBC社長の長沼修さんや映画監督の是枝裕和さんらが、今後のテレビの役割や表現について意見を交わした。
狸小路TVではSIAF期間中、狸小路スタジオ(南2西4)やOYOYO会場(南1西6)で、ゲストを呼んでテレビにまつわる番組をネットなどで発信しており、道内局の現役制作者らも出演。この日は、その集大成として、1970年代のドラマ上映とテレビ関係者のよる討論会を開いた。
札幌五輪をテーマに、開会式の4日前に放送された「風船のあがる時」(72年、脚本・倉本聰、演出・守谷寿男(もりわけとしお))、長沼さんが初めて演出家として携わった「聖夜」(73年、脚本・倉本聰)をスクリーンで上映。その後、長沼さんや是枝監督のほか、道内局の4人が登壇して討論した。
各局の制作者はローカル局の課題や現状を紹介。かつて番組制作会社「テレビマンユニオン」に勤めていた是枝監督は、同社最高顧問の今野勉さん(夕張育ち)の言葉を引用し、「(今野さんは)『テレビとは何か』という定義ではなく、『テレビには何が可能か』をくり返し言っていた。その考えが反映されていたから当時の番組は面白かった」と話した。
また、ネットの影響やテレビ離れへの意見も出された。長沼さんは「テレビは技術進歩とともにあった。音から映像、白黒からカラー、そしてデジタル。そのたびに表現が豊かになってきた。IT時代では、例えばスマホやSNS(会員制交流サイト)の世界を何らかの形でテレビに取り込む必要がある」と指摘。自由な番組制作の足かせになっている視聴率についても触れ、「数字に迎合していくと、内容は薄くて刺激的なものになる。乱暴なアイデアだが、民放各局が相談して、日曜9時以降は視聴率に測らずに自由に作ってみる。その後に視聴者が(ネットの)『いいね!』を押して、視聴率代わりにするのはどうか。大胆な考えを持って頑張ってもらいたいと」と提言した。(久条秀樹)