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国内屈指の老舗映画館 大黒座の100年 中
2017年5月3日 北海道新聞 朝刊
デジタル化決意の投資
_木製の壁、高い天井、座布団が敷かれた座席…。お菓子やお酒を持ち込める昔ながらの映画館の雰囲気は、日高管内浦河町の「大黒座(だいこくざ)」でしか味わえない。その大黒座が存続の危機にさらされたことがあった。
_きっかけは2000年代に進んだフィルムからデジタルへの切り替えだった。高額な映写設備が必要で、国内で閉鎖する映画館が相次ぎ、大黒座は選択を迫られた。
_「浦河から映画の灯を消すつもりはない」。4代目館主三上雅弘さん(65)はデジタル化の道を選び、500万円の借金をし、設備投資を決めた。
有志から寄付
_館主の熱意に地元の映画ファンも立ち上がった。「大黒座サポーターズクラブ」の石黒建一代表(39)は「いま三上さんを応援しないと後悔する」と有志を募り、寄付口座を開設。ホームページ(HP)で全国に呼び掛け、14年に40万円を集めた。その後も毎年10万円ずつ届ける。映写設備の設置工事を無償で引き受けた地元建設業者もいた。
_来館者を増やそうと、13年前から続く活動もある。 年1度の「大黒座まつり」。参加者が館内で演奏やダンスを披露、大黒座のファンになってもらう試みだ。
_発案者は雅弘さんを東京の学生時代から知る浦河在住の漫画家鈴木翁二(おうじ)さん(68)。「気兼ねなく行ける数少ない場所を守りたかった」と始めた。参加者は徐々に増え、今は約100人に上る。鈴木さんは「映画を見に来る人が増えたかどうかは分からないが、関心を高めることはできた」と手応えを感じている。
_催しの様子や上映情報をプログなどで発信する人もおり、全国で知名度の高まりを感じる雅弘さんは「いろんな人たちの支えに感謝している」と話す。
来館者増に光
_支援者のおかげで、来館者が年間7千人まで落ち込んでいた大黒座にも今年は明るい兆しが見え始めた。 「シン・ゴジラ」「ラ・ラ・ランド」など話題作の上映で「近年にない客の入り」と雅弘さんは喜ぶ。
_3月中旬のある夜。「続・深夜食堂」の上映に満席近い40席が埋まった。町内の飲食店が無料で豚汁などを用意したイベント。以前、映画館を盛り上げようと 「浦河映画サークル」を立ち上げ、手作りの機関誌を町内に配ったパン店経営の以西(いさい)明美さん(57)は「大黒座は今も皆に必要な場所なの」としみじみ語った。
_日本映画製作者連盟(東京)によると、16年の映画入場者数は前年に比べ1300万人増え、1億8千万人になった。大黒座に通う人には「何を見たかも大事だが、どこで見たかも大事」との思いもある。そんな大黒座にとって新たな活動につながる要請があった。