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全国映画よもやま話

札幌の実行委が全面協力 徳島で初の国際短編映画祭

2016年4月1日 北海道新聞 朝刊

札幌の実行委が全面協力

徳島で初の国際短編映画祭

 

札幌国際短編映画祭(実行委と札幌市主催、略称SSF)が国内で初連携した“兄弟分”の第1回徳島国際短編映画祭(「VS東京」実践委主催)が3月18日から3日間、徳島市中心部のあわぎんホールで開かれた。西日本で初の短編映画祭とあって、延べ4500人の映画ファンらでにぎわった。プログラム構成や作品提供など、全面的に協力したSSF実行委も「特色ある地方同士の連携の第一歩。短編映画の魅力を運ぶ『北前船』のような存在になれば」と期待している。

(中村公美)

 

東京一極集中の流れを変えようと、徳島県が映像産業に着目して企画した。全体を取り仕切る総合ディレクターは、同県神山町にサテライトオフィスを置く映像作家の菱川勢一武蔵野美術大教授が務める。SSFとも関わりの深い菱川さんは「SSFは10年の歴史があり、国内外の評価も高い。ノウハウを徳島に伝えてほしい」と協力を依頼。SSF側も準備段階から上映作品の選定やプログラムづくりなどに加わってきた。

SSFが札幌での過去の上映作から、質が高く、徳島の人にも親しみやすいと思われる29本を提供。さらに徳島出身監督の作品など地元で選んだ32本を加えた計61本が上映された。来場者は、初めて短編映画を見る人がほとんど。徳島市の会社員、塚原健太郎さん(27)は「短い間に内容が凝縮されていて引き込まれた。映画は好きで長編はよく見るが、これまでにない体験」と興奮気味に話した。

菱川さんは「初めての開催なので、まず短編映画の魅力を知ってもらうことを目指した。好意的に受け止めてもらえたようだ」と安堵する。一方で、「来年度以降は入場料、コンペティション実施の有無など検討課題もある」とも。

今年は入場料はすべて無料で、事業費2500万円の大半は県が負担した。だが、収益確保や作り手への評価という面から有料化を検討するべきだとする意見も。また、今回コンペティションの実施は、応募作品や審査員の確保が見通せず見送ったが、SSF実行委が「作り手にとって賞は励みになる」と言うように、コンペは映画祭を盛り上げる要素という声もある。

SSFの審査員も務め、全国の映画祭に詳しい映像監督の森本晃司さんは「来年度以降は、全国に多数ある映画祭の中に埋没しないために、徳島の独自性を出すことが必要」と指摘。来場者の多くが中高年層で、若者が少なかったことも触れ、「周知の方法に見直しも必要」と話す。

SSFの山岸正美実行委員長は「地方だから共有できる感動や悩みがある。以前から地方都市間の連携を模索していたが、今回の徳島開催でその可能性を実感できた。さらに提携を進め、大きなうねりにしたい」と手応えを感じている。今後は京都ヒストリカ国際映画祭との連携を視野に、短編映画の輪を広げていく考えだ。