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全国映画よもやま話

作り手、市民とふれあう5日間 来月2日から「ゆうばり映画祭」

2017年2月24日 北海道新聞 朝刊

作り手、市民とふれあう5日間

来月2日から「ゆうばり映画祭」

 

開幕は神山健治監督作/富良野ロケ作 世界初公開 「特撮劇場」も

_国内外から映画の作り手やファンが集う「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017」(実行委主催、北海道新聞社特別後援)が3月2日(木)から6日(月)までの5日間、夕張市内で開かれる。昨年から主会場となった「合宿の宿ひまわり」(旧夕張北高)など2会場5スクリーンで約90本を上映。話題作や独自の視点の作品が見られるほか、会期中は監督や出演者ら多数のゲストが訪れ、ファンや市民との交流も行われる。

(中村公美)

 

_招待作品は8本。国内外の話題作を劇場公開前に鑑賞できるとあって、ファンの注目を集める。開幕作(2日上映)は神山健治監督の新作アニメ「ひるね姫~知らないワタシの物語~」、閉幕作(5日(日))は国村隼の怪演が光る韓国映画「哭声/コクソン」(ナ・ホンジン監督)。同作は第69回カンヌ国際映画祭で注目を集め、韓国で大ヒット。国村は4日(土)のトークイベントにも登場する。

_今月26日(日)(現地時間)に決定する米2017年アカデミー賞の候補作も上映される。オーストラリアで養子となった少年が25年後に実の家族を見つけ出した実話をもとにした「LION/ライオン~25年目のただいま~」は作品賞など6部門、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺をジャクリーン夫人の視点から描いた「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」は主演女優賞など3部門でノミネートされている。俳優の斎藤工の長編初監督作「blank13」、韓国ドラマ界の巨匠ユン・ソクホ監督が富良野などで撮影した「心に吹く風」は世界初公開だ。

_若手の登竜門「オフシアター・コンペティション部門」では応募作532本の中から選ばれた7本を上映、グランプリを決める。同映画祭おすすめの「ゆうばりチョイス」部門は長編、短編合わせて30本超を上映。酒井麻衣監督が一人の少女が女優になるまでを描く、「はらはらなのか。」(4日)、ロナン・ジレ監督が広島でロケした日仏合作「海の底からモナムール」(5日)などだ。

_映画表現の可能性を広げようと昨年創設された「フォービデン・ゾーン(禁じられた領域の意味)」は今年も7本を上映。性や暴力などに正面から向き合った内容で、作品によって年齢制限を設ける。インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門では351の応募作から選ばれた若手監督の20本を上映、賞を贈る。

_特別企画協力の「スカパー!」が番組と連動させて初開催するイベント「スカパー!×昭和40年男『特撮劇場』」(4日、入場無料)も話題だ。「ミラーマン」や「秘密戦隊ゴレンジャー」など1970年代の特撮ドラマの名作や幻の試作版を上映するほか、「ミラーマン」の鏡京太郎役・石田信之らによるトークも。当日の模様は4月2日(日)にBSスカパー!で無料放送される。

_シンポジウム「ゆうばり映画祭の未来とオフシアターの歴史」(5日)や、赤平で撮影した「雪女」を監督した鈴井貴之と鈴木直道・夕張市長が産炭地の魅力を語る「トーク」(4日)もある。

_同映画祭プロデューサーで札幌で映像事業を手掛ける「プリズム」会長の深津修一さんは「今年は各部門とも映画通をうならせる質の高い作品がそろった。作り手との交流など、滞在してもらうことでより映画祭が楽しめる」と話している。詳細は公式サイトhttp://yubarifanta.com/を参照。問い合わせは実行委事務局☎0123・57・7652へ。

 

 

北海道の可能性を発信したい

 

_同映画祭の実行委員長には昨年11月、作家の小檜山博さん(79)が就任した。同映画祭への思いや今後の抱負などを聞いた。

_実行委員長を打診された理由は、大の映画好きで、「北の映像ミュージアム」(札幌)の館長をしているからのようです。国内外にファンがいる有名な映画祭ですし、夕張市出身でない自分に務まるのか不安はありました。しかし、僕はこれまで北海道の文化振興にかかわり続けてきた自負がある。そして、この映画祭は北海道の文化がどうあるべきかを考えるとき、大きな指針となる存在。そう確信していたことが、この大役を引き受けた理由です。

_この映画祭には「お祭り」として、映画ファンを拡大する役割がある。でもそれだけでは終わらせたくない。人生は一度きりですが、映画を見ることで何回もの人生を生きることができる。その感動が映画の魅力だと思う。そんな「映画とは何なのか」という根源的な問いを、見る側から作り手に発信する場にしたい。

_日本に映画祭は数百あると言われます。夕張ならではの特徴がないと埋没してしまう。カギは雪や寒さなど北海道ならではの風土。僕は映画の主役は風景だと考えています。それは登場人物の心理を現す、大事な役割を持っているから。さらに夕張市は破綻を経験した自治体。映画祭は再生の象徴的な存在だから、そのイメージも生かしたい。

_運営費の調達など課題があることは確か。しかし、志のある映画祭として認知されることで、支援の輪は広がるはず。北海道は、明治時代にいろいろな土地から人が入った歴史から、慣習にとらわれず平等で自由な気風がある。だからこの映画祭でも新しいことに挑戦したい。文化だけにとどまらず、あらゆる面で北海道には無限の可能性があることを伝えたいですね。