『敵』東京国際映画祭三冠受賞!2/2(日)・3(月)日本語字幕付バリアフリー上映
東京国際映画祭三冠受賞!
東京グランプリ・最優秀監督賞(吉田大八)・最優秀男優賞(長塚京三)
「敵」はある日突然現れる。
妻に先立たれ、20年間一人暮らしの元大学教授、渡辺儀助、77歳。
捨てきれない煩悩と向き合いつつも、講演や執筆で僅かな収入を得ながら、
人間関係も整理し、遺言書を書き終え、預貯金が後何年持つか、すなわち
自身が後何年生きられるかを計算しながら、管理された日常を平穏に送っている。
自ら定めた“Xデー”に向かって―。
だがそんな生活にある日、突然訪れた「敵」。
それは主人公の日常を壊し、我々を恍惚の世界へとダイブさせる、没入感へと誘う。
監督・脚本:吉田大八
何十年も前に小説を読み終えた時から「敵って何?」という問いが頭を離れず、とうとう映画までつくることになりました。筒井先生の作品を血肉として育った自分にとってそれはかつてないほど楽しく苦しい作業の連続でしたが、旅の途中で長塚京三さんをはじめとする素晴らしい俳優たち、頼もしいスタッフたちと出会えてようやく観客の皆さんが待つ目的地が見えてきた気がします。 自分自身、この先こういう映画は二度とつくれないと確信できるような映画になりました。 僕は幸せです。
原作:筒井康隆
すべてにわたり映像化不可能と思っていたものを、すべてにわたり映像化を実現していただけた。 登場人物の鷹司靖子、菅井歩美、妻・信子の女性三人がよく描き分けられている。 よくぞモノクロでやってくれた。
渡辺儀助役/主演:長塚京三
タイトルは、原作である筒井康隆先生の小説の表題を戴くと聞きました。吉田監督のシナリオは、概ね原作に準じるものだとも。両者とも大変興味深く読ませて戴いて、なんだろうこの主人公は、ほぼ監督そのままじゃないか、と思えてなりませんでした。ご自分でおやりになればいいのに、とさえ。難はただ一つ、「ちょっとばかり歳が足りないか!」。まだやり直しのきく年齢での「絶望」は、全き絶望とはいえませんからね。 冗談はさて置き、老耄に押しまくられて記憶が混濁し、授けを求めようにも、人も、物たちさえも、いつの間にか掌を反したように敵側に回っていて、恐らくは粗略でもあり、傲慢でもあったろう主人公の嘗てのあしらいに、幾星霜かを経て、なお復讐するかのようだ。 「この逆境、老残零落のシラノ(ド・ベルジュラック)だったらどうするだろう?」などと考えてみたら面白そうである。僕の最後の、いや最後から二番目あたりの映画として受けさせて戴きます。かなりの強行軍は承知ですが、共演者、スタッフの皆さんが、最後まで味方でいてくれることを信じて。「てき」、いいタイトルです。