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> 全国映画よもやま話 > vol.064


2008年7月25日 東京新聞より転載

「良質な作品」全国に上映網
50の映画館が結束 流通機構「シネマ・シンジケート」発足


「大型作品」隆盛に対抗 ミニシアターの存在感示す 全国約四十五都市にあるミニシアターなど約五十の映画館が、映画の新たな流通機構「シネマ・シンジケート」を発足させた。映画界ではハリウッドの大作やテレビドラマの劇場版がヒットしているが、こうした流れに対抗。良質な作品を上映する全国網を組織することでミニシアターの存在感を高め、観客増につなげる考えだ。(小田克也)

 シンジケートは、地域の映画活動をサポートする「コミュニティシネマ支援センター」(事務局、財団法人・国際文化交流推進協会)が設立準備を進め、今月に入って都内で発足に伴う記者会見が行われた。
 
映画界では、ワーナー・マイカルやTOHOシネマズなどシネマコンプレックス(通称シネコン、複合型映画館)が上映するのは大型作品が主流。それは最低でも全国150スクリーン規模といわれる。

 これに対し、シンジケートが扱おうとしているのは50スクリーン程度の小規模の秀作。念頭にあるのは、国内外で絶賛された西川美和監督の「ゆれる」(2006年)のような作品だろう。

 これまで50スクリーン程度の作品は、配給会社が上映をめぐって各映画館と個別に交渉してきたが、シンジケートが機関決定すれば、自動的に全国の加盟館が上映することになる。

 このため、配給会社にすれば@各映画館と交渉する経費や手間を省けるA加盟館が相互に上映日程を調整するので、これまでより配布するプリント本数を節約できるBシンジケートはサイトやフリーペーパーで作品紹介をするので宣伝費を圧縮できる――といったメリットがある。

 第一弾作品は、萩生田宏治監督の「コドモのコドモ」(9月公開)の予定だ。

 シンジケートは、このように配給会社の経費負担を和らげることで良質な作品を呼び込み、年間6〜12本を上映する方針だが、目的はあくまで各映画館のイメージアップと体力強化にある。

 各映画館が、「良質な映画を供給するシンジケートに加盟している映画館」と地元で認知してもらえれば、必然的に観客も増えると考えているのだ。

 むろん、そのためにはシンジケート自体の“ブランド化”が必要で、今後はフリーペーパー(約30万部)の発行やサイトの作成に力を注ぐ。

 その中身について、シンジケート代表の堀越謙三さん(金沢市のシネモンド代表)は「映画評論家の蓮実重彦さんに書いてもらえるような質の高いものにしたい」としており、映画批評などを充実させる考えだ。

 シンジケートが発足した背景には、ミニシアターの運営などを含めて映画界が危機的状況にあるとの認識がある。

 堀越さんは「邦画は年間約450本のうち約20本が、興行収入全体の8割を占める」と説明する。つまり興行収入の大半はテレビドラマの劇場版やハリウッドの大作などが占め、これら以外の作品を上映している地方のミニシアターや老舗映画館などは厳しい経営を迫られているというわけだ。

 さらに目立つのが若年層の映画離れ。ある映画関係者は、「中学生が映画館で映画を見るのは3年に1本。お小遣いはケータイやゲームに使ってしまい、小学生の時はアニメ中心で実写映画を見ない。そういうことが影響している」と指摘する。

 映画界では、テレビ局や大手配給会社による大量宣伝→大量動員の「短期決戦型の興行」が目につくが、堀越さんは「町中の映画館を残したい。じっくり上映し、若い人の映画離れを食い止めたい」と話している。