2008年4月13日(日)北海道新聞朝刊より転載
札幌で来月映画公開
雪印食品牛肉偽装 告発社長のドキュメント
信念貫くおっちゃんの姿
2002年1月に雪印食品(解散)の牛肉偽装を告発した、西宮冷蔵(兵庫県西宮市)の水谷洋一社長(54) に密着、廃業から会社再建までを追ったドキュメンタリー映画「ハダカの城」が5月17日から、札幌・シアターキノで公開される。再建を目指し奮闘する水谷社長を、1年半にわたり取材した柴田誠監督(39)は「『ここで負けたら内部告発する人がいなくなる』と、普通のおっちゃんが信念を貫く姿を見てほしい」と話している。(村田泉)
作品はJR大阪駅前の歩道橋で、水谷社長がカンパを呼びかける場面から始まる。背後ではためくのは「まけへんで!西宮冷蔵」と書かれたのぼり。
告発後、会社は取引先が離れ廃業。水谷社長は03年秋に歩道橋でカンパ活動を始めた。マスコミでも取り上げられ、全国から800万円が集まり、04年4月に営業再開した。
映画では、電気が止められ懐中電灯の明かりでの生活や、連日歩道橋で座り込み通行人に支援を求める様子、真っ暗な事務所で告発に踏み切った思いを語る姿が描かれている。
公開を前に札幌を訪れた柴田監督は「告発を『後悔してない』と言う社長は、ヒーローではないがタフでかこいいおっちゃん。自分に正直に、怒り、あきらめず、真剣に生きる力強さにひかれた。ミートホープや赤福などの不祥事が相次ぎ、雪印事件が投げかけたものは終わっていないと感じる」と話した。
■運送業界の闇カルテルを内部告発した串岡弘明さん(61)=富山県=
私は内部告発後、約30年間閑職に追いやられました。勤務先のトナミ運輸に対し損害賠償などを求める訴訟を起こしたのは、水谷さんが牛肉偽装を告発した6日後の2002年1月29日です。
偶然でしたが私たちの告発がマスコミで大きく取り上げられたことや、東京電力の原発ひび割れ偽装、三菱自動車のリコール隠しなどの不祥事が相次ぎ、内部告発の意義が国民に広く知られるようになりました。
水谷さんと交流をするようになり感じるのは、ぼくたちに共通するのは告発までは、ごく普通の生活をしていた市民だったということです。水谷さんも過激な思想の持ち主ではありません。内部告発は密告ではなく、良心に基づく自然な行為なのです。
法より内部の論理が優先する日本では、企業・官庁の不祥事はなくなりません。定年退職し講演する機会もありますが、特に学生には組織で自由にものを言う大切さを伝えたい。人事に影響がある人の顔色をうかがい、不祥事隠しなど内輪の論理で行動する、そんな日本企業のあしき強調主義を変えるのは若者だと期待しています。
※雪印食品牛肉偽装事件
雪印食品は2001年秋、国の牛海綿状脳症(BSE)対策の在庫牛肉買い上げ制度を悪用し、外国産牛肉約30トンを国産牛肉と偽って申請、約1億9千万円を搾取した。02年1月、西宮冷蔵の水谷社長の告発で発覚。同社は同年4月に解散した。この事件の後、同事業をめぐる牛肉偽装事件などが相次いで明らかになり、水谷社長の告発は食品の偽装表示が社会問題化するきっかけとなった。
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