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『全然大丈夫』インタビュー

以下は、キノでのプレミア上映終了後のトークや取材インタビュー、キノ映画講座での発言を、トーク風に要約したものです。(文責:キノ代表 中島洋)

藤田容介監督(以下、藤田D) 観ていただいてありがとうございました。北海道は2回目で、1回目のときは阿部サダヲと一緒だったんですけど、今日は地味でスミマセン。よろしくお願いします。(場内拍手)

新井直子プロデューサー(以下、新井P) 『全然大丈夫』はどうでしたか?私は初めて藤田さんと自主映画をやっていた時から、荒川良々さんと藤田監督で・・・と思っていましたが、やっと実現できました。

藤田D 荒川くんとは「大人計画」をやっていて、主演の映像を撮っていたこともあり、面白い役者で、長編やってみたいと思ってました。その時に新井さんからお話をいただいて。この話は、相当前から考えてたんですけど、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)が古本屋の映画を撮る(『珈琲時光』のこと)と聞いて、「ヤバイな、かぶりそう。男2人、女1人だ」と、ちょっと気にしてました(笑)

新井P 監督はですね、かぶることを気にしていて、オリジナルにこだわっているので、チェックして、「まあ大丈夫かな」と(笑)


――――木村佳乃さんがとっても魅力的だったんですけど、キャスティングの決め手と経緯を聞かせて下さい。

新井P 木村さんの役は、太陽と月なら、月のイメージで。ご本人はとてもシャキシャキした明るい人で。不器用そうな人に同じイメージの役をやってもらったら狭くなってしまうので、真逆な木村さんにやってもらったら広がると思ったんですね。結果、明るくはしなかったけど、凛としたものがあるようになって、成功だったと思います。面接の鼻血のところ、かっこいいでしょ。


――――撮影はいつ頃ですか?脚本作りや撮影のエピソードがあったらお願いします。

藤田D 撮影は06年11月後半〜12月にかけて4週間で撮りました。脚本に比べ、4週間で撮るのはキツかったですね。かなりカットしていて、脚本どおりにしたら2時間半ぐらいになっちゃいます。木村さんの中にあかりのイメージがないので、どう重なっていくか、最初はかなりディスカッションしていきました。役者の芝居を作るのに最も時間をかけました。
ちょっと戻りますけど、制作費は約7,000万円でできているけど、本当だったらこれで済むような額じゃないです。脚本が面白いと言ってくれたので、役者やスタッフの皆さんが乗ってくれた。(とても謙遜されて/文責・注)まだ名も知られてないので、自分を評価してもらうには、この脚本しかなかった。それを気に入ってくれ、応援してやろうと思ってくれたのです。荒川くんや岡田くんと是非やりたいと思っていたので、嬉しかった(場内拍手)


――――監督は、細かくきっちり演出されるとお聞きしたんですが、荒川さんも、それに芸で応えられたと思いました。アドリブもありました?

藤田D 脚本を細かく細部まで書いて、撮影しながらその日のうちに変えて(それも細かく書きます)、役者の反応を見て、また書いてもいます。アドリブは一切ないんです(「ほーっ」と観客の反応)。ご覧いただいて、アドリブだと思ってくれたのなら、「やったな」という感じです。本当に現場では口うるさく直してしまうほうで、ベテランの方にも、頭を下げて「もう1回お願いします」と(笑)。

新井P 監督は、すごく粘り強いんですよ。

――――ベテランといえば蟹江さんですね?

藤田D 蟹江さんには、病気を演ずるんじゃなく、ただボーッとして欲しいと伝えました。素晴らしい役者さんですから、すぐに何かやられるんです(笑)。根岸さんも、5段階あったりしますが(笑)、解釈さえうまくすり合わせれば、うまい役者さんなので皆さん大丈夫なんですよ。成金役の小倉さんも、真逆のイメージの小倉さんをキャスティングしました。手品のシーンは25回ぐらいNGでした。
大体において、役者の皆さんはやり過ぎてしまうので、抑えるようにしました。ハシャいだ映画が一番嫌いで、ただ地味だったらいいだろ(笑)が二番目に嫌い。押し引きエンターテインメントがいいです。


――――ティッシュの箱が開かないアイディアは、どこで思いついたんですか?

藤田D 昔、ティッシュの箱あけるのに失敗した(笑)記憶があるんです。傘袋が入らなかったり(笑)。自分が器用じゃないので、不器用でバタバタしているところがあるので、それが反映してますね。3人のキャラクターみんなに、けっこう自分のことが反映してますね。岡田くんは、周りのことを予想以上に気にしてたり、よくみられようとする。あかりは、不器用でうまくいかない。荒川くんは、バカで間抜けなところです。実は根岸さんの役の仕事を8年ぐらいやっていたこともあるんです。なんかホームレスも身近な気がしちゃって、ちょっと間違えば・・・。でも、自分がイヤだなと思う人は出しませんでした。

――――岡田さんや田中さんのキャスティングのことも教えて下さい。

藤田D 岡田くんは『渚のシンドバッド』でナチュラルな芝居ができていることを感じていて、世の中で評価されている以上の人だと思うんですよ。あまり知られていないけど、いい年のとり方して、いいポジションになるな、と思ってます。
田中さんの役は重要で、お客さんが後味悪くならないように考えました。単なるイケメン俳優だったら、「結局イイ男に行っちゃうのかよ」となって、あかりが薄っぺらくなるし、リアリティがない。田中さんは二枚目もいけるけど、イヤミじゃない。先ほど言ったように、キャスト費にお金がかけられないので、お手紙でお願いをしました。渾身の思いを込めて出したら、引き受けて下さって。あと、白石加代子さんは、あの役を納得させられる人はそういない。白石さんか、お亡くなりになった岸田今日子さんかな、と思ってました。どの方をとっても、本当にキャストには恵まれましたね。


――――ちくわを作るシーンが良かったです。

藤田D ちくわは、魚をおろしてちゃんと作ってる。撮ってれば良かったなぁ。鱈と海老と味噌を混ぜて、香りは最高だったけど、うまくなかった(笑)。でも、ちくわの作り方がわかって、成果はありました(笑)。

藤田D あと、猫に食べさせるのは、本当に大変(笑)。猫がステーキ食べていて豪華にしたかったので、キャットフードの汁を塗ったりして。

藤田D スタッフも本当に頑張ってくれて、小道具はタケシのポスターを作ってくれている人ですが、「手を抜けない!」とすごく丁寧にやってくれました。


――――影響を受けた監督や映画はありますか?

藤田D 昔は、すごくよく観た。それで今の自分の血肉になっていると思うけど、誰かこの人ってのは名前を挙げにくい。何かに似た映画を作ろうと思わないけど(本当に、自身のオリジナリティにこだわっておられます/文責・注)、映画は、映画を観てないとちゃんと作れない。映画には、独自の法則や文法や技術があって、これはたくさん映画を観たりして、勉強しないと身につかない。でも今は、あまり映画の枠にとらわれないで、シンプルにいけたらいいかな、と思ってます。なので、参考というのはないけど、あえて言うと、成瀬巳喜男とか白黒の昔の日本映画はすごいなと思います。

――――最後にひとことお願いします。

藤田D 「癒し」とか「たそがれ」とか、最近押し付けがましい映画が多いけど、そういうのと一緒にされたくないかな。今回「憩いまくりムービー」って宣伝になっているけど、「癒し」だけは入れないで(笑)!実際に癒されてほしいし、憩ってほしいし・・・でも、それを初めから前面に出すのって、下品でしょ。だから、あんまり気にせず観てもらって、よく見たら、そういう気持ちになってもらえたら嬉しいです。