TOP > 全国映画よもやま話 > vol.048


『人のセックスを笑うな』特別編

『人のセックスを笑うな』の井口奈己監督と、主演の永作博美さんが、昨年の12月7日にキャンペーンでお越しになりましたが、スケジュールがびっしりのためシアターキノへは残念ながらお寄りいただくことができませんでした。そこで代わりに、全国で大大ヒット中のこの作品の秘密を解き明かそうと考えました。その秘密は主演の松山ケンイチさんと蒼井優さんのインタビューの中に、ヒントがあると思ったのでした。
以下は、「cut」2月号のお二人のインタビューのポイントを抜粋したものです。

蒼井優×松山ケンイチ
できることならずっと一緒にやりたいですけどね。(松山)
ゴールデンコンビみたいな(笑)。(蒼井)

松山「この作品をやる前まで、自分が役に近づいてなんぼって思っていて、自分自身をそのまま演じるなんて、役に対して失礼だと思ってました。だけど、今回は本当に自分が自分自身を演じていた感じだったんです。だから自分の中で『本当にこれでいいのかな?』っていうのがずっとあって。さっき蒼井優さんが9割通用しない現場があったって言ってたんですが、この作品に対して『自分のなにかが通用したのかな?』って思うと、なにもしてないなっていうのがあるんです。カメラが回ってるときのほうが自分にとっては現実のような気がして、撮影中は普通に恋愛していましたし。本当に変な感覚でした。そんなの初めてのことでしたから」

蒼井「この映画は決まりごとをほとんど作らずに撮るっていうスタンスで、最初はそれに慣れなくて。どう動いていいのかわからなくて、どうしてもなにかを表現してしまおうとするんですよね。それが井口監督の作品に合わないのは自分でもわかっているけど、『(自分が演じた)えんちゃんとして成立してるのかな?わざとらしくないかな?』って、すっごい頭で考えてしまって。でも(松山を指して)、ロケバスでひたすら楽しい楽しいって言ってたんですよ」

―――ははは。
―――じゃあ、ふたりの距離はあまり近づかないままだったんですか?


蒼井「1回だけご飯を一緒に食べに行って、横に座ってたんだけど、会話はなかったよね。どうやって会話なく食事できたのかわかんないけど、会話はなかったよね」

松山「うん。なんで今は話せるようになったのかもわからないですけどね」

蒼井「自分だよ!(笑)」

松山「ん?」

蒼井「(笑)すごい扱いなんですよ、わたしに対して。気持ちいいぐらい、適当で。永作(博美)さんはすごく大事にしてるのに」

―――それって、まさに映画の世界と同じじゃないですか(笑)

蒼井「そうそう、今日聞こうと思ってたのが、あれは役で、なんて言うの、松山ケンイチと(役の)みるめの境をなくすためにああしていたの?」

松山「いや、なっちゃうからさ。自分もえんちゃんとして現場にいるわけでしょ?」

蒼井「うん」

松山「だからそういうふうになれるのさ」

蒼井「ああ、それでか」

松山「そうなっちゃうって。だって(親友を演じた)忍成(修吾)さんと話してたら普通の話になるもん(笑)」

―――じゃあ、お互いキャラに入っちゃっていた感じなんですか?


蒼井「わたしは映画の世界に寄り添うような状態で現場にいる感じでした」

松山「うん、だから会話もやっぱりそれっぽくなってしまって。永作さんが、自分をみるめにさせてくれるとこがあったし。監督も3日目でみるめになったって言ってました。自分は3日目で諦めた感覚なんですよね」

蒼井「(笑)なにを諦めたの?」

松山「作ろうとするのを」

蒼井「ああ、役作りってこと?」

松山「うん。最初は挑戦してたんですけど、やっぱりダメで」


面白かったんですよ。「永作さんに本当に恋してるの?」って感じで。(蒼井)

松山「うん、違いますね。なんか、言えないすね。(永作が演じた)ユリの最大の魅力は、(座ったまま足を上げて)こういうふうに靴下を脱いでたとこあるじゃないですか。あれなんですよね」

蒼井「なんか、現場で見てて本当に面白かったんですよ。『永作さんに本当に恋してるの?』って感じで。どうでもいいんですけど(笑)。でも、『この人はなんなんだろ?』ってずーっと見て思っていました。楽しかったですね、現場は」

―――蒼井さんも松山さんみたいに役に入っちゃって、えんちゃんのように本気で嫉妬はしなかったんですか?

蒼井「嫉妬はないですけど、永作さんがいなくなってからテンションがガタ落ちしてる松山くんを見て、なんとなく『今日の相手がわたしでごめんね』っていう気持ちはありました(笑)。本当にガッタ落ちだったもんね」

松山「うん。確かになんか・・・・・・」

蒼井「『お前かよ!』みたいな感じで」

―――めちゃくちゃ贅沢ですね。

松山「いやいや(笑)」

蒼井「(笑)『永作さんがいいんだけど』みたいな」

松山「いや、それはないけど。誰かと一緒にいたいんですよ。ぼくもみるめも。だからそのテンションが低くなったのは、ユリがいなくなったときのみるめの気持ちとすごく似ているんじゃないかとは思います」

―――今回は違いましたが、おふたりの恋愛ものとかもアリなんですかね?


松山「恋愛ものはですね・・・・・・やっぱり永作さんに会うと、どうしてもユリに見えてしまって。で、すごい幸せな気分になってしまうので、永作さんを永作さんとして見れるようにならないとぼくは次の恋愛はできない」

蒼井「(笑)1年経っても、引きずっているのかな」

松山「こないだ取材で会ったとき――」

蒼井「メロメロだったもんね(笑)」

―――永作さんが恋愛対象だったら、蒼井さんはどういう存在になるんですか?

松山「うーん・・・・・・ユリと(旦那の)猪熊さんとみるめがいるわけじゃないですか。ぼくがユリだったら、(君は)猪熊さん」

蒼井「それ切ない(笑)」

松山「でもさ、それないと、なんもないんだよ?」

蒼井「どういうこと?」

松山「一番求めてるものがなにかっつうと、やっぱり安心できる場所でしょ?安心できる場所があるから外に行けるわけで。だからね、ぼくもみるめもズルイんだよね」