『恋しくて』中江裕司監督インタビュー このインタビュー内容は、「恋しくて」プレミア上映にお越しになった、中江裕司監督の、トークやティーチイン、また、取材インタビューでのポイントをまとめたものです。
※映画の内容にかなり触れています。
(文責:中島洋)
●北海道には、美幌に兄が住んでいますし、サッポロビールのCMを撮ったりしていましたので、近い感じですよ。
●きっかけは、やっぱりBEGINのエッセイですね。「さとうきび畑の風に乗って」を原案にして、石垣島でBEGINと関わった人とか、いろんな話を聞き、本物には勝てない(笑)ので、BEGINの物語ではなく、沖縄の高校生達の青春を撮りたいと思った。いろんなエピソードが積み重なって、出演した皆が作った映画になりました。監督の私は保護者みたいなもんです(笑)
●オーディションで選んだのは、生粋の沖縄っ子に、出て欲しかったから。プロも素人も関係なく、彼らはむしろ演技をしていない。順撮り(映画の流れの順番に撮影していくこと)で撮っていたので、皆が本当に成長していった。ボーカルの栄順を見たら良くわかるけど、始めと終わりでは、顔つきが全く違う。出演者そのものの、ドキュメントにもなっていて、編集しながら、そのあまりの成長振りに、嬉しさで思わず涙が出てしまった。観客の皆さんも、石垣島に行っているような気分で、見ながら成長していきます(笑)
●人を撮るということは、風土やその土地にいる人を撮ること。石垣島は「音楽の神様に祝福された島」とも言われていますが、だからこの島を撮ることは「歌」を撮ることだと思った。
石垣島は、本当に歌が溢れていて、すごく豊かな気持ちになる。僕は沖縄本島に住んでいるので、石垣島に行くと、光が強く、影が濃いなと感じる。それは楽しいこともある、悲しいこともあるのが世界で、だから世界は美しいとの気持ちにつながる。その、生きていくことのあふれる想いを、歌わずにいられないのが石垣島なんです。
だから、「恋しくて」は、劇伴(劇中に流れる伴奏曲、いわゆるBGM)がない。流れるのは全部、誰かが歌ったり、演奏している。人の想いがあふれて、歌になっているんです。
栄順には、加那子のために、常に歌うように伝えた。2人は、映画とともに成長したけど、本当に恋をしていた。映画とともにその恋が終わってしまうことを予感したのだと思う。後半の切ない2人の感情も、本当のものだった。僕は、それでまた泣いてしまったんです(笑)
●ところで、石垣島では、歌がうまい人が圧倒的に多い。牛まで音楽を聴いている(笑)
琉球の血筋でしょうね。太ももファイブがいいでしょ(笑)※これは観た人でないとわかりません。
その歌の山場は、栄順がイカ天の決勝シーンだけど、この日は朝から、彼にプレッシャーをかけ続けていて、なかなか上手く歌えなかったんです。そんなこともあると思ってBEGINのメンバーにも、この日は来てもらっていたのだけど、何度目かのリテイクのあと、メンバーが彼に寄っていってボソボソと耳打ちしたら、次に見事に良くなったんです。後で何て言ったのと聞いたら、誰に向かって歌っているかを言って、最後に「監督の言うことは聞くな!」と言ったそうなんです。それで、何かふっ切れたんでしょうね。まさに、栄順が監督である僕を乗り越えていった瞬間で、映画が出来た!と思った。監督としての最高の時でした。
※いい話ですねえ。こうやって映画は、伝えられていくのだと思うのです。
●僕は、沖縄で、シアターキノのようなミニシアター「桜坂劇場」も経営していますが、僕にとっては、劇場も映画を作ることも同じ。素敵なものを伝えるサービス業なんです。沖縄の人たちは、生活のために生きている。沖縄では、親戚の集まりがあると、堂々と仕事を休みます。仕事は手段に過ぎません。仕事のためには生きていないんです。だから豊かなんです。
どんなに辛くても、沖縄では歌ってきました。辛いと、泣いてないで歌おう!笑おう!となるんです。是非、「恋しくて」を観て、石垣に来て下さい。そして石垣島にお金を落としていって下さい(笑)
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