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 朝日新聞(2006年4月24日)より

広島県尾道市で一般公開中の戦艦大和の原寸大ロケセットについて、出身地の尾道で数多くの映画を撮影している大林宣彦監督(68)が「人寄せのための公開は、戦争やふるさとを商売にしているようで恐ろしい」と、市の観光行政を批判している。
セットには予想を超える人が集まり盛況だが、大林監督は「公開中は故郷に帰らない」と宣言した。(須藤大輔)

ロケセットは、昨年12月から公開された「男たちの大和/YAMATO」(佐藤純弥監督)の撮影のため、約6億円をかけ制作された。本物の大和は広島県呉市で建造されたが、今回は数ヶ所あった候補地から、空いている造船所があるなどの条件を満たした尾道市に造った。

昨年7月から市や観光協会でつくる公開推進委員会が大人500円、小学生300円で公開を始めた。3月末現在で当初予想の3倍以上の78万人が訪れている。3月末までの公開予定だったが、大型連休期間の5月7日まで延長された。

この映画は東映、朝日新聞社、テレビ朝日などが出資。最終的には興行収入約50億円、400万人以上の動因が見込まれている。制作した角川春樹氏(64)と尾道市との協議がきっかけで公開が決まったという。角川氏は「壊すだけで2千万〜3千万円はかかる。だったら地元に恩返ししようと公開に同意した。プロモーションとしても成功だった」と話す。

大林監督は、映画自体は評価しているが、その後のセット公開を支援する観光行政のあり方について、講演会などの場で繰り返し批判している。これに対し、尾道市観光文化課は「古いものを大切にする精神は監督と共有しているはず。公開は一時的なものに過ぎず、町の風情を壊すことにはならない」と反論する。

「心に残るものが記念碑」
大林監督は次のように語っている。
◇ ◇ ◇
僕の自慢は、尾道に映画の記念碑やセットを残していないことだ。映画を見た人の心に残ったものが記念碑。セットを残そうなどという提案はすべて断わってきた。尾道市にとってはそれが不満だったのだろう。

「男たちの大和」という映画がふるさとで撮影されたことは、誇らしく思う。僕の尾道でのスタッフも協力した。でもセットは残すためのものじゃない。スクリーンに映し出されて初めてリアリティーを持つ。単なる張りぼては、夢を壊すだけではないか。

恒久的に残すものとして、戦艦大和の歴史がある呉市につくられたのなら賛成するが、いかにセットを残すかばかりに気をとられた尾道市につくられたことは、大和にとっても不幸だ。

小学生からも金をとって、ふるさとや戦争を商売にしている。セットが公開されているうちは尾道とは絶縁だ。これは、大林映画30年の理想に対する否定であって、怒らないわけにはいかない。

僕の願いは、ふるさとがあるがままに残って欲しいということだ。高度成長期、尾道でも古いものが壊されたが、これからは古いものを残すことが資源になる。「そこにしかない暮らし」を求めて旅人は来るのだから。