北海道新聞夕刊 2006年1月25日(水)より
27日クランクイン『壁男』 札幌在住・早川監督
ロケ、スタッフすべて札幌
東京と違う都市伝説
映画ロケ地として人気の高い北海道。今年も道内ロケ作品の製作、公開が続く。二十七日(金)には札幌在住の早川渉監督の劇場用長編「壁男」の撮影が始まる。二十八日(土)には小樽を中心に撮影された「最終兵器彼女」(須賀大観監督)と、札幌ロケの「スキージャンプ・ペアRoad
to TORIN0 2006」(真島理一郎総監督、小林正樹監督)が公開される。
諸星大二郎の同名漫画を、札幌在住の早川渉監督が映画化するのが「壁男」。ほぼ全編を札幌で撮影、全員が札幌のスタッフという陣容で臨む。
主演は大河ドラマ「新選組!」などの堺雅人と、CMで人気の小野真弓。
早川監督は一九九八年の出版直後に原作を読み、映画化を考えたという。「うわさが広まった壁男に対してテレビリポーターが『あなたは誰ですか』と問いかける場面があります。自分とは何かというのはとても普遍的なテーマだし、答えられる人は少ない。そこがすごく面白いと感じた」
ロケ、スタッフとも札幌にこだわる理由について「映画には撮影した場所だけでなく、作る人の住む土地の空気感も反映される。札幌を舞台に札幌のメンバーで作れぱ、今まで見たことのない日本映画になるのではないか」と話し、「この映画で描くのは一種の都市伝説。札幌のように歴史の浅い街なら、日本的情緒を排して東京と違うものができると考えた」。
早川監督は名古屋出身。北大在学中に映画製作を始め、CMディレクターを経て「7/25【nana-ni-go】」で九九年のカンヌ映画祭国際批評家週間に出品を果たした。現在は映像製作をしつつ、札幌国際大講師を務める。新作は「7/25」以来の長編。「本拠地をローカルに置きつつ、東京ではできない作品ができる実証例にできれば」。二月半ばまで撮影し、三月末完成の予定。秋ごろの公開を目指す。
■壁男
テレビリポーターの響子(小野真弓)は恋人の写真家・仁科(堺雅人)から「壁の中に住む男」のうわさを聞く。一方、番組にも壁男についての投書が届く。うわさを紹介した響子は取材を続けるが、仁科はさらに壁男にのめりこみ、不思議な現象が人々を巻き込む。
北海道新聞より
「壁男」観察日記 冬の撮影現場
北海道と言えば、緑豊かな大地のロケーションを思い浮かべますが、冬の撮影について回るのが雪です。札幌上空からの空撮、マンション屋上からの朝日など、晴れの日を狙う撮影が映画「壁男」には多数あります。スケジュールを立てる助監督は、毎日の天気図とにらみ合いをしています。天候、気温に左右されながら撮影を進めて行くには、あらゆる状況に対処できる想像力が必要なのです。
今回の「壁男」クランクインの最初のシーンは、小野真弓さん演じる響子が解体途中のアパートを訪れる様子でした。撮り始めたときには小雪がちらついており、演出に影響がなかったので撮影を続行したのですが、次第に晴れて雪がやんでしまいました。一つのカットで雪が降っていて次のカットで晴れていては違和感が生じてしまうため、演出部はある工夫をします。除雪のし過ぎで穴の開いたスコップで、少しずつカメラ前に雪を降らせたのです。
そんな風に適宜に対応して乗り越えた現場は、映画が完成したときにとてもいい思い出になります。同じ毎日なんてありません。だからこそ撮影は楽しくてやめられないんです。
クランクインから2週間が過ぎ、撮影ももう終盤です。「壁男」撮影隊は、重要なキャストの水戸ひねきさんも加わり、早朝から深夜まで及ぶ撮影を乗り越え、雪にも負けずに進んでいます。原作のイメージにはない雪景色と「壁男」は美しく融合して、新たな視点からの札幌を描き出そうとしています。
(中川広子=映画「壁男」制作デスク)
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