司会:
キャスティングがバランスよく配置され、それぞれの個性が生かされて、とても素敵だったと思うのですが、キャスティングはどのように?
手塚監督:
橋本麗香さんと川村カオリさんは、前の『白痴』に出演してもらって、次のでも出演してもらおうと決めていました。ですので、2人をメインにしたミステリーが作れたらと思い、脚本段階でかなり2人をイメージして書いていきました。あて書きしていったところもありますよ。松岡俊介さんも早い段階で決まりました。安藤政信さんは慎重な方なので脚本をまず送ったのですが、安藤さんは、「1週間前に手塚さんの夢を見て、会ったこともないのにすごく気になっていて、そのすぐあと出演依頼がきたのでびっくりしました」ということで、OKになっちゃったんです(笑)。
他の方も、1ヶ月くらい一緒に仕事するので、仕事をやらせていただいて、人間的に魅力のある人に出演してもらおうと思いました。皆さん、誰もが魅力ある方々です。ファッション界のモデルをやっている人も多く出ていただいてますが、俳優とモデルのハーモニーが面白くなりましたね。
司会:
今日のそれぞれのマスコミインタビューで、犯人が誰なのか、取材が終わってからも皆さん興味深く話されていましたが、この犯人に関しては、演出上でも面白い工夫をされていますね。
手塚監督:
実は、撮影する時は、俳優の皆さんには犯人が誰なのかを教えていないのです。もちろん、犯人役の人は、その役作りをしないといけないので、その方と、ある一人の人物には教えていますが、それ以外の俳優の皆さんは全く知らないのです。そうすると、俳優は、知らないまま演技するので、とても不安になるのです。その不安感が、画面をますます緊張感あるものにしていくのです。そして、ある意味、演技を超えたリアリティーを生み出しました。
でも、1ヶ月にもなってくると、俳優同士でも疑心暗鬼になり、現場もギスギスしてくるんですね。「お前は犯人を知ってるんだろう」「お前が犯人じゃないのか」などと言ってですね。でも、最終的に「一番悪いのは誰だ!」となったら、「監督だ!!」ということで、私が悪役でやっと収まりました(笑)。
司会:
先ほど、監督の台本を見せていただいたのですが、後半の大切なシーンになると、「演出上の理由により、このシーンは伏せてあります」といったふうに書いてあったりするのでびっくりしました。まさにヒッチコック的スリラーでもある『ブラックキス』は、ハリウッドでもやらないことを試みたわけですね。
手塚監督:
ヒッチコックは、非常に細かく、画面の隅々にまで演出される方ですから、犯人を教えないでやるようなことは決してしませんが、‘ハリウッドでもやらない’というより‘できない’でしょうね。このような演出方法ができたのは、私がインディペンデントな作り方をしているからであり、だからリアリティーを得ることができるのだと思います。
古今東西の恐いテクニックを散りばめて作っていますが、いろんな楽しみ方ができますので、ゆっくり楽しんで下さい。
――場内拍手――
※マスコミインタビューの一部も追加しています。
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