「17歳の風景―少年は何を見たのか」
若松孝二監督、新潟シネウインド来館記(ウインド誌1月号より転載)
これが本当に肺癌を患い、手術から生還した男の姿なのであろうか。マイ・リビング・レジェンド、若松孝二。映画を知ってから耳にした数々の武勇伝、そして正に想像通り威風堂々としていた、1900年代最後の年99年3月に初遭遇した時。今白分の目の前に在るその姿は、その時と何ら変わっていない。闘士である。
05年11月4日、最新作「17歳の風景―少年は何を見たのか」のプロモーションのため、新潟の地に降りたった若松監督。朝10時半頃に到着、夕方4時過ぎには帰京というわずかの間に、新聞2社、月刊誌1社の取材、ラジオ収録2社のスケジュールをこなす。神出鬼没、ゲリラの如き早技だ。
取材の間も徹頭徹尾若松孝二だった。この日のインタビュアーはすべて若い女性。端で聞いていて、「あの若松孝二に何と無礼な」とハラハラするが、本人は軽くいなす。そして本題に関して。「子供に、親を尊敬しろというのは間違っている。子供にとって親という存在は敵だ。一人前になってやっと親のことがわかるものなんだ」とか「都内の撮影はゲリラ。バレる前にさっさと撮り終えて撤収する。俺はそういうのベテランだから」あるいは「俺の映画は百人観て二、三十人が面白かったと言ってくれればいいと思ってる。でも観た人に、時間の無駄だったと言わせる映画だけは絶対作らない。金はいざとなればなんとかなるが、過ぎ去った時問だけはどうにもならないから」。ほんの一例だが若松節全開である。そして、とどめにさりげなく一言「俺は、人間は生涯権利と白由のために闘い続けるものだと思っている」――その姿に、若松監督が「まるでゴーストタウンのよう」と好んで撮影に使う冬の日本海の(もちろん今回の作品にも相当量使われている)凛とした、壮厳な風景がオーバーラップしてくる。
移動の車中「金を集めて、連合赤軍を撮る。傍観者でもない、権力側でもない俺の視点で。それを撮って俺は引退だ」と笑う。インタビュー集『時効なし。』(ワイズ出版刊)によれば、“あさま山荘事件”の時は、放水車の水がすぐに凍りつくような状況だったという。その極限を、時代の生き証人若松孝二がどう描くのか。若松映画の集大成というよりも、若松孝二そのものというべき映画となろう。完成が待ち遠しいような、その日が来るのが恐いような複雑な心境。何はともあれ、一陣の風を巻き起こし、闘士は新潟を去った。
「さよならみどりちゃん」古厩智之監督
新潟シネウインド来館記(ウインド誌1月号より)
「さよならみどりちゃん」上映に併わせて10月29日に古厩智之監督が来館されました。「シネ・ウインドさんに初めて来たのはかれこれ10年ほど前になりまして。この手作り風な刺繍とか。なんだか学校の文化祭みたいな感じで…」と懐かしそうに背中側の緞帳を振り返りながら始まったトークイベント。
撮影期間中は、ユタカ役の西島秀俊さんが突如「古厩監督、俺はスクリーンにおける存在感を増やしたいんだ」と弁当二個食いを始め、それに反してゆうこちゃん役の星野真里さんは大切な場面の為か、ほとんど食べずに細くなり、クラブ(有楽〜YOU
LURK〜)のママ役の佐々木すみ江さんは「監督、私こういう役初めてでやりたかったんです」と役作りに没頭する余りカラオケの練習のし過ぎで肺に穴が空いてしまったり。メガホンに加え役者陣の個性にハラハラし通しな現場だったようです。
当日は会場から質問を受ける機会もあり、フィルムについては“その場で見返すことの出来るビデオより時間を置いて見直しのできるフィルムを使った方が白分には合っている”ということや、原作(作/南Q太)にあった主人公の歯磨きシーンが映画に無かったことに対して「なんでだろう?説明の場面だと思ったから使わなかったのかなあ」と実際に本の頁をめくっては丁寧に答えてくださいました。その他、過去の作品に歌うシーンが含まれていることに対しての質問もあり「楽しいことがあるとつい歌ったり踊ったりしてしまうじゃないですか」と古厩監督らしい感覚から取り入れられていることがわかりました。監督白身、実はガツガツした恋愛はあまり得意ではないそうで、そういった点からも人間が成
長する姿に目を向けて本作に取り組まれたそうです。
「この窓は君のもの」「まぶだち」「ロボコン」、そして「さよならみどりちゃん」。"明るめ"と"暗め"の作風の振り幅を広げ、次回作への意欲も語っていただけました。
イベント後、ウインド隊との一席では新潟名物"かきのもと"を食していただき(辛子&醤油にて)、ユタカとゆうこちゃんの行く末について盛り上がらせていただきました。思い思いに二人の恋愛について隊員が語り合う中、「…こうやって、自分が作った映画について色んな人に色々と語り合ってもらえたりするのは作り手としては嬉しいことです。作って良かったなあと思います」と、少々度が過ぎた暑苦しい恋愛論にまで進展しつつあったかもしれない中、感慨深げに微笑ましい視線で応えてくださいました。ただ、海賊版のビデオについては、「存在を容認する人達が、映画ファンや僕達を苦しめるのですよ」と話されていて、映画に対してとても真摯な姿勢でおられることも見受けられました。次のご来館をお待ちしております。ありがとうございました。
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